漣の声
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魔術師ギルド、そこは学問の府。
魔術師や賢者を志す老若男女が集う修練の場。
しかし、魔術師というものは、必ずしも世間の評判が良いわけではない。一般の人々からは、得体の知れない術を操る不気味な存在として疎まれるのが普通であり、ギルドは、とかく嫌われがちな魔術師を保護する役割も担っているのだ。
故に、魔術師ギルドが一般の人々から相談を受け、厄介ごとを解決するということは、魔術師全体のイメージアップに大きく貢献することとなる。
私とエリコ様は、連れ立って街の中を歩いていた。正確には、魔術師ギルドの大先輩であるエリコ様の少し後ろを、私がお供をして歩いている形になる。
「珍しいですね。一般からの依頼に、エリコさまが自分から立候補するなんて」
「・・・ねえ、ノリコちゃん」
私の問いが聞こえているのかいないのか、エリコ様は例によってぼんやりとした口調で私に語りかける。
「今回の件、ね。ずばり、原因は何だと思う?」
・・・今それを確かめに向かってるんじゃないんですか、私たち。
「ええと・・・今回の件、って、お屋敷の怪現象ですよね」
心の中でツッコんでから、私は口を開いた。正面から思い切りツッコんでもいいのだけれど、いちおう私にとっては大先輩だから。もっとも、面と向かってツッコまれたからといって気にするような人じゃないけど。
「誰もいないのに足音がしたり、勝手にドアが開いたり閉まったり」
「花瓶や本が勝手に飛んでくる、なんてこともあったそうよ」
「それって、いわゆるラップ音とかポルターガイストっていう、あれですよね」
私はこれまで読んだ書物の知識を総動員する。
「だとすると、原因は地縛霊------ファントム、だと思います」
「よくできました。教科書通りの答えね」
エリコ様は横顔でふふ、と小さく笑った。
「違うんですか?」
その反応に何か含みがあるを感じて、私は眉を顰めた。
「さあ。話を聞く限りでは、ファントム以外に思いつかないけれど?」
エリコ様はそう言って肩をすくめる。
それにしては、何か引っ掛かる言い方なんだよね。
「だったら、私たちが出向くのはお門違いなんじゃないですか。幽霊なら、神職であるヨウコさまやシマコさんの管轄では」
「・・・ねえ、ノリコちゃん」
またまた聞こえているのかいないのか、エリコ様は私の問いかけは無視して逆に私に問う。
「何でしょう」
「本物のポルターガイストって、見たことある?」
「いえ、実物は見たことないです。何せ教科書通りの答えしかできないくらいですからね」
「わたくしも無いわ」
エリコ様は私のささやかな嫌味もさらりと聞き流した。ぼんやり、というより、うっとりしたようなこの口調。
・・・たいへん、良くない兆候である。
「見てみたいじゃない? 本物のポルターガイスト」
ああ・・・やっぱり。
恐いもの見たさ。
物見遊山。
虎の尾を踏め。
藪はつついて蛇を出せ。
お願いだから、そういう道楽に私を巻き込むのはやめて欲しい。
「・・・はあ」
「とりあえず一目見て、それからヨウコでもセイでも呼べばいいわ」
やる気なしオーラを出そうとつとめる私の努力には全く気付くことなく、さも楽しそうに笑うエリコ様。
・・・だから、セイさまも畑違いですって。
ってか、ファントムって結構アブナい悪霊じゃありませんでしたっけ・・・。
またまた心の中で一人ツッコんで、取り敢えず私は、これからの我が身の無事を天に祈った。
家々の詰んだ市街地を抜けて橋を一つ渡ると、辺りの風情が一変する。ごみごみとした街中と違い、道の両側にぽつり、ぽつりと、生け垣や柵で囲われた庭つきの一軒家が建っている。大抵の家は屋敷と呼んでいい大きさだし、庭も芝生や花木まで手入れが行き届いている。きっと、どの家にも、お抱えのメイドさんや庭師がいたりするのだろう。
「ああ、あの家ね」
半歩前を歩いていたエリコ様が、羊皮紙のメモを片手に呟く。私たちの目指すその家も、庭付き一戸建て。確かに屋敷と呼んでもいい大きさだけど、日当たりが良くてこぎれいで、庭に花なんか咲いてたりして、『幽霊』屋敷のイメージにはほど遠い。
玄関の呼び鈴を鳴らすと、ほどなく若いメイドさんが現れた。
「こちら、マーチさんのお宅で間違いございませんでしょうか」
そう言って品の良い微笑みを浮かべるエリコ様。
ほんと、外面の良さは超A級なんだから。
「ああ、魔術師ギルドの方ですね」
メイドさんは、まるで待ち焦がれていたようにそう言って、私たちを屋敷の中へと迎え入れた。
「奥様とお嬢様が、お待ちかねです」
私たちは、その奥様とお嬢様がお待ちかねの、一階の客間に通された。
「ようこそ、おいで下さいました」
先ず口を開いたのはマーチ夫人だった。かなり若作りのご婦人である。隣の娘さんの年頃を考えたらそれなりのお歳なんだろうけど、リッチな生活してると老け込むスピードも遅いんだろうか。
「魔術師ギルドから参りました、エリコ・トリィと申します」
再び、エリコ様の営業スマイルが炸裂。
(奥さーん、騙されちゃ駄目ですよー)
この人、妙ちきりんな研究で毎度お騒がせなマッド魔術師なんですよー。
・・・なんて。実際に声を大にして言うわけにはいかないので、独り心の中で宣伝してみる。
「こちらは助手のノリコ・ニジョウです」
(もしもし、いつから私は貴女の助手になったんですか)
確かに私はまだヒヨッコの見習いだけどさ。
・・・なんて。さすがに依頼人の前でボケツッコミ合戦を披露するわけにもいかないので、とりあえずここは黙ってお辞儀をしておく。
「娘のアヴリルです」
よろしくお願いします、と言って深々とお辞儀をする娘さん。年の頃は、エリコ様と同じくらいだろうか。一般的には美人の部類に入るのかもしれないけれど、シマコさんと出逢ってからというもの、私の中の美人判定基準ラインはすっかり狂ってしまったようで、実際の所、よくわからない。
とりあえず、奥様もお嬢さんも、お金持ちの割には腰が低くて好印象。
「どうぞ。おかけになってください」
夫人に促されて、私達はソファに腰を下ろした。
うわ、ふっかふか。ギルドの応接室のソファとは大違いだね。
「では、まず、詳しいお話をお聞かせ願えますでしょうか。人づてに聞いた話では、正しい判断ができませんので」
エリコ様に促され、マーチ夫人は事の成り行きを話し始めた。
最近亡くなったというのは、この家の主人の母親で、名前はメイリーンさん、70歳。一週間ほど前、食事を終えて、自室に戻る途中で急に倒れて、それっきり意識が戻らなかったということ。ここ数年は屋敷の外に出ることはほとんどなく、家族と食事をとる時に食堂へ降りてくるのと、時々廊下から窓の外の景色を眺めるくらいで、どちらかというと部屋に籠もりがちだったとか。あとは、私達が事前にギルドで聞いた通り。それ以来、部屋の中から昼夜を問わず物音がしたり、家の人が遺品の整理に部屋の中へ入ろうとすると物が飛んできたり。メイリーンさんの幽霊が屋敷の中をうろつくこともあるとか。
一通りの話を聞いて、エリコ様はふーん、としばし考え込んで。
「・・・少し、不躾な質問をいたしますが」
マーチ夫人の顔を真っ直ぐに見た。
「メイリーンさんが、誰かに強い恨みを抱いていた、というような心当たりは、おありですか。或いは、家族の誰かと折り合いが悪かった、とか」
「エリコ様。それ、ほんとに不躾ですから」
私は思わず声に出して言った。そんなド直球で、面と向かって聞くか、普通。そんなこと。
「・・・いいえ。それはない・・・と、思います。確かに、義母は無口で、私達ともあまり話をする方ではありませんでしたし、主人にしても、仲のいい親子だとはお世辞にも言えませんでしたが・・・人を恨んで、化けて出るような、そんな人では、なかったように思います」
マーチ夫人は苦笑しながらも、ちゃんと答えてくれた。いい人だよ、ほんと。
「どうして、そう思われるのですか。何を根拠に」
私のツッコミは意に介さず、エリコ様。いくらいい人でもそのうち怒り出すんじゃないかと、私はハラハラしながらそのやりとりを聞いている。
「・・・義母が亡くなる、二週間ほど前になります。私と主人は、その・・・ちょっとしたことで、かなり激しい言い争いになりまして。怒った主人が、私を殴りつけました。そのとき、何事かと部屋から出てきた義母が、それを見て、激怒したんです。無口で、あまり感情を出さない、あの義母が、その時は酷く声を荒げて、『嫁に感謝こそすれ、手を上げるとは何事か』と、主人を叱りつけました。------だから------」
「なるほど。もう結構です、よくわかりました」
次の言葉を見つけあぐねているマーチ夫人に、エリコ様は大きく頷いた。
マーチ母娘の表情からは、彼女たちが今度のことに酷く当惑していることが見てとれる。幽霊が出る理由に、全く心当たりがない、という顔だ。
「そういえば、今日は、ご主人は」
「・・・仕事に出ております」
「そうですか。では、早速、件のお部屋を拝見いたしましょう」
そう言って、エリコ様はソファから腰を浮かせた。
「っと、その前に、もう一つ」
はい、と答えて、マーチ母娘が立ち上がりかけたところを急に引き留めるように、エリコ様。
「この件に関して、まだ私がお伺いしていないことが、残っていませんか? 例えば、私達が来る前に、誰か、この幽霊を退治しようとした人がいる------とか」
まったくの不意を突かれて、マーチ夫人の顔がさっと曇った。見事なフェイント。やっぱり性格悪いね、この人。
ぽふっ、と柔らかなソファに再び腰を下ろして、聞く体勢のエリコ様。
「はい・・・実は」
マーチ夫人も観念して、再び腰を下ろして話し始める。
「主人のコネで、チャ・ザ神殿の司祭様に、お祓いをお願いしたのですが------」
「うまくいかなかった、と?」
口ごもる夫人の言葉を、エリコ様が代わりに継いだ。
「はい。義母の幽霊を祓うどころか、幽霊に怒鳴りつけられて、飛んできた家財道具に------」
「こってんぱんにされて、ほうほうの体で逃げ出した、と。それで、神殿の沽券に関わるから、このことは他言無用に、と念を押された・・・そんなところでしょうか」
エリコ様ってば、歯に衣着せず、ずけずけと、まあ。
マーチ夫人は、気まずそうに、こくりと頷いた。
「なるほど・・・ちなみに、お祓いに来たのは、『司祭』でしたか?」
「はい。そのために、主人はかなり大枚はたいて寄進をしたようで・・・後で、陰で揉めておりました」
ふうん。神職って、ピンキリなんだね・・・と、私は、神職の鑑のようなシマコさんのことをふと思い浮かべた。
「こちらです」
マーチ夫人と娘さんに導かれ、私たちは二階へと続く階段を上った。
二階にも結構な部屋数があるようで、廊下が長い。
階段を上がると、一人の老婦人が廊下の中程に佇み、窓の外を眺めているのが見えた。老婦人は、近づく私たちに気付いてか気付かないでか、くるりと私達に背を向け、すたすたと廊下を歩いてゆき、一番奥の部屋へ、すぅっ、と入ってしまった。
「・・・あのご婦人は?」
「あれが・・・先日亡くなりました、義母です」
「ええっ!?」
思いの外頓狂な声が出てしまって、私は思わず口を押さえた。
今、思いっきり真っ昼間ですよ!
ってか、ものすっごいクリアに見えたんですけど! しかも血色いいし!
幽霊ってもっと青白い顔してるとか、半分透けて見えるとかじゃないの!?
「ノリコちゃん。太陽の光で消えてしまうのはレイスよ。幽霊じゃないわ」
エリコ様は私の方をちらりと見て、ぼそりと言った。
・・・エスパーですか、エリコ様。
「まあ、確かに、真っ昼間に歩き回る幽霊なんて、私も聞いたことないけどね」
すたすたと歩きながら、小さく肩をすくめるエリコ様。
・・・何か微妙に悔しいし。
「今、あの、ゆ・・・義母が入っていった、一番奥の部屋がそうです」
マーチ夫人の案内で、私達は、ポルターガイストが起こるという問題の部屋の前に立った。アヴリルさんが鍵を開けてくれる。
あれ。そいうえば、さっきのお婆さん、ドアを開けるような様子も、鍵を開け閉めするような様子もなく、すんなりと部屋に入っていったっけ。
・・・やっぱり幽霊なのかな。あんなにくっきりはっきり姿が見えて、顔色もいいのに。
アヴリルさんの手で、ドアが静かに、内側へ開かれる。
「・・・何も起こりませんね?」
「ええ。こうして、部屋の外で様子を見ているぶんには、何も。これが、一歩でも部屋に足を踏み入れると、即、部屋の中の物が飛んできます。・・・これをご覧下さい」
そう言ってマーチ夫人は、廊下の壁を指さした。一生懸命直そうとした形跡があるが、壁紙のそこかしこに傷がついている。
「水差しやティーカップが飛んできて、できた傷です」
エリコ様は壁の傷を一通り調べると、部屋の入り口に立って暫く室内をじっと見つめた。中に入れないので、灯りが点けられないから一寸暗いけれど、廊下から覗き見る限りでは、何てことのないごく普通の小綺麗な部屋だ。
「・・・ところで、お義母様は、いつ頃からこちらにお住まいでしたか?」
エリコ様がマーチ夫人の方を向き直って尋ねる。
「さあ・・・私が嫁いできた時にはもう、この部屋で寝起きしておりましたが」
夫人は頬に手を当てて考える仕草で、そう答えた。
「その前のことはご存じではありませんか?」
「それ以前といいますと・・・」
夫人が首を傾げる。
「いつ頃嫁いでいらっしゃった、とか」
「いえ、ここは義母の生家で・・・一度嫁いだものの、嫁ぎ先と折り合いが悪く、まだ幼い主人と義姉を連れて戻ってきた、と、聞いております」
夫人は少し言いにくそうにそう語った。まあ、要するに出戻りなわけで・・・亡くなった人のことを悪く言うみたいで、あまり気持ちのいいものではない。アヴリルさんも心なしか少し渋い顔をしているように見える。
「なるほど・・・そうですか」
何を納得してるのかわからないけれど、納得したように頷いて、エリコ様はまた部屋の中へ向き、何かの呪文を唱え、印を切り始めた。その独特のリズムや抑揚は上位古代語のそれだとわかるけれど、何の魔法かはわからない。こういうのを見せられると、この人は変人だけど、やっぱり導師候補生のエリート魔術師で、私はまだまだヒヨッコなんだな、と思い知らされる。
「それから、もう一つ」
呪文を唱え終わると、エリコ様は、夫人の方をくるりと振り返った。
「その、壊れた水差しやティーカップは、お義母さまのものでしたか?」
「? いえ、台所にあったもので、特に義母のものというわけでは・・・」
夫人は首を捻りながらも、とんちんかんな質問に丁寧に答えてくれる。ほんといい人だね。
「ノリコちゃん」
と、エリコ様は今度は私の方を振り返った。
「この部屋の中。見てみて、何か気がつくこと、ない?」
「気がつくこと・・・ですか」
私は促されるまま、入口に立って、室内を覗き込んだ。
「んー・・・」
大きな窓から、レースのカーテン越しに差し込む柔らかな陽光。綺麗に整えられたベッド。マントルピースの上には花瓶や置物が、飾り棚にはティーポットやカップが整然と並べられている。ポルターガイストなんて不気味なことが起こる割には、綺麗に片付いていて、まるで誰かが毎日------
どんっ
考えてる途中で不意に背中を思いっきり押されて、私はよろめきながら部屋の中へ踏み込んでしまった。
「・・・っちょっ! 何すんですかエリコ様!」
ざわっ
振り返って思わず怒鳴った私の背後で、何か不穏な気配が部屋中に湧き上がるのが感じられた。私には武術の心得なんて無いけれど、これが殺気、というやつなのかもしれない。
ぼふっ
「ぶほっ!」
まず手始めに、ソファーにあったクッションが、振り向いた私の顔面めがけてもの凄いスピードで飛んできた。柔らかいから痛くはないけど。
目を開けると、部屋の奥にあった本棚から、本が数冊、ひとりでにするりと抜け出すのが見える。
・・・って。次はアレが飛んでくるの
びゅんっ
「うわっ!」
革の表紙の分厚い本が、反射的に仰け反った私の鼻先すれすれを掠め飛んだ。尻餅をついた私は、床に這いつくばるようにして部屋の外を目指す。
ごんっ
「あいたっ!」
あともう一寸のところで後頭部に衝撃。最後は転がるようにして何とか廊下に辿り着いた。
「だ、大丈夫ですか!?」
アヴリルさんが心配そうに声を掛けてくれる。
「え、ええ・・・何とか」
「大丈夫?ノリコちゃん」
悪党魔術師が半笑いで声を掛けてくる。
「&%$#※××っっっ! 何っってことするんですかエリコ様!」
「ごめんごめん。ちょっと確かめてみたいことがあって」
その口調、全く誠意の感じられないっすよ、エリコ様。
「だったら自分でやればいいじゃないですか!」
「だって。物が当たったら痛いじゃない」
「痛かったですよ! 当たり前じゃないですか!」
「まあまあ。怪我がなかったんだからいいじゃない」
「怪我してたらシャレになりませんから! ってか怪我するかもしれないって思ってたんですか!」
「ううん、それは大丈夫だと思ってた。・・・まあ、予想してたより若干激ししかったみたいだけどね」
この腐れ魔術師! いつかマーファ様かファリス様に罰当てて貰ってやる!
「〜〜〜〜っっ!」
「あ、あの・・・それで、何か、おわかりに、なりましたでしょうか」
おずおずと尋ねるマーチ婦人の言葉で、ふと我に返る。そういえば、依頼人のことすっかり忘れてた。
「ええ。お陰様で、大体の見当はつきました」
「えーっ!」 マーチ夫人とアヴリルさんの視線が、自信満々に答えるエリコ様でなく、思わず声を上げた私に注がれて、私は慌てて口をつぐんだ。
だって、エリコ様がここに来てやったことといえば、ちょっと話聞いて、ちょっと部屋の中見て、ちょっと呪文唱えて、私を酷い目に遭わせただけじゃん。これで何が分かったっての!?
「そ、それで・・・」
「私の見立てが正しければ、これは悪霊などではありません。チャ・ザの司祭さまの手に負えなかったのは、そのせいです」
エリコ様は静かにそう告げた。
母娘の顔がぱっと明るくなる。
「ですが、私達でどうにか出来るものでもありません」
「え・・・」
母娘の顔が曇った。
「ですので、明後日、どうにか出来そうな者を連れて、出直して参ります。詳しいことは、その時に」
エリコ様はそう言って、優雅に微笑んだ。
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