Salva Me


 とある田舎町の、山奥の集落。
「ハッピー! マーチ!」
 鎮守の森に佇む椎の巨木に落雷があったのは、今から三日ほど前のこと。
「そちら側には民家があります! そちらへは近付けないように誘導してください!」
 田の畦道を疾走しながら、ビューティが叫ぶ。
 推定樹齢五百年、地元の人々からはご神木と崇められるその木が燃え落ちてしまって以来、周辺では奇怪な事件が相次いでいる。まず、鎮守の森の神社の社殿が何者かによって文字通り木っ端微塵に壊された。落雷の翌晩のことと推定される。
「はいっ!」「っ……わかった!」
 次に、広大な畑が荒らされ、膨大な量の作物が何者かに食い荒らされた。そしてその次には、養鶏場の鶏舎が襲われ、三千羽の鶏が一夜にして惨殺され、喰われた。
「サニー! ピース!」
 襲撃者の正体は不明。現場に残された痕跡の数々は、熊でも猪でも、ましてや人でもない、未知の怪物の仕業としか思えないものばかりで、警察も頭を抱えるばかり。
 ―――次は、人が襲われるのではないか。
「山に逃げられては厄介です! その前に仕留めましょう!」
 恐怖におののく人々のため、たまたま夏休みで遊びに来ていた『伝説の戦士』たちが立ち上がる。
「よっしゃ!」「オッケー!」
 四日目の、満月の夜。待ち構えていた五人の前に現れたのは―――
  しゃぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!
 彼女たちが想像だにしなかった、異形の妖魔だった。強いて例えるなら、巨大な雲丹。軽自動車ほどもあろうかという体躯を、黒い、無数の細い棘のようなものに覆われ、やはり黒く細い数本の脚で蟲のように地面を這いずり回る。
「うわぁぁぁこっち来るな!」
 虫嫌いのマーチが闇雲に腕を振り回せば、放たれた風の刃が周囲の稲もろとも妖魔の棘を斬り飛ばす。
  ぐぎぎぎぎぎぃっっっ!
 妖魔が、金属を擦り合わせるような声をあげた。漆黒の針山のような体をくねらせながら、苦悶するようにぱっくりと開いた口は、淡い月明かりでもはっきりと判るほどに鮮やかな赤い色をしている。
「任せや! ……プリキュア!」
 サニーが跳んだ。
「サニィィィィィファイヤーーーー!」
 燃えさかる火球を、妖魔めがけて叩き込む。
 妖魔は昆虫のごとく素早い動きでそれをかわし、
  じゅごごごぉぉっっ!
 水田に火球が着弾し、泥混じりの激しい水飛沫と蒸気を上げた。
「なぁっ!? ……速っ!」
「なら、あたしが―――プリキュア!」
 マーチの気合いに応え、風を纏った魔力球が出現する。
「マーチ………シューーート!」
 斜めに踏み込んで、インステップで蹴り出された魔力球は、低い弾道で千切れた稲の葉と水飛沫を巻き上げながら真っ直ぐに飛び、
「おわぁっ!?」
 妖魔の尻を掠め、サニーの目と鼻の先をすり抜けていった。
「マーチのヘタクソ! どこ狙っとんねん!」
「ヘタクソって何だよ! サニーだって外したじゃん!」
 売り言葉を律儀に買って、マーチ。
「うっさい! 大体何や、そんな遠くから。ヘタクソならヘタクソらしくもっと近くから撃ちや!」
「やだよ! ってかヘタクソって言うな!」
「みなさん下がってください!―――プリキュア!」
 ビューティの一喝に、二人は叱られた子供のようにびくりと肩を跳ね上げ、喧嘩を中断して脇へ跳び退いた。
「ビューティ・ブリザード!」
  きしゃぁぁぁぁぁぁぁっっっ!
 「力あることば」とともに発せられた彼女の魔力が、妖魔の足もろともに水田一枚を一瞬で凍りつかせ。
「今です!」
「―――サンダー!」「―――シャワー!」
 動きを止めた敵に、強烈な雷の一撃と、清冽な浄化の魔力光が降り注いだ。
  ぎぎぎぎゃぁぁぁぁぁんっっっ!
 耳をつんざく、妖魔の悲鳴。漆黒の体が、みるみる質量を失ってゆく。
 やがて、ハッピーの放った桜色の魔力光の残滓が夜の闇に消え。
「……やったか……?」
  ざざざざざざざざっ!
 次の瞬間、サイズが縮んで文字通り山嵐のような姿になった妖魔が、氷の間から這い出し、目前の山林に向かって走る。
「! 不味いです、ここで逃がしては―――!」
 木々の間に潜り込んだ妖魔を追って、五人の戦士達も林の中へと足を踏み入れた。


 妖魔の後を追って踏み込んではみたものの、そこは昼間でさえ薄暗い山の中。いくら今夜は満月といっても、絶望的に光が足りなかった。
「あちゃー、こらアカンわ……どうする? ビューティ」
「そうですね。こう暗くてはどうにも―――」
 握った右手を口元に当て、ビューティ。ちょっとした考え事をするときの、これが彼女の癖のようだ。
「……待って。何か聞こえるよ?」
 最初に気付いたのは、ピースだった。
「ほんとだ。何だろう……声? 泣いてるみたい」
「幽霊やったりしてな」
「! ちょ、やめてよ!」
 訝しく思いながら、五人は声のする方へと進んだ。
 声は次第にはっきりとし、泣き声に、時折しゃくり上げるような音と、鼻をすする音が混じる。
 そして。
「あれ!」
 ハッピーが前方を指さした。
 木々の間に佇む、子どもが一人。年の頃は五、六歳、男の子のようである。浴衣のようなものを着て、べそべそと泣きながら両手の甲で涙と鼻水を拭っている。
「……何で、こないなとこに子どもがおんねん」
「そんなこと言ってる場合じゃないよ!」
 訝しむ仲間たちをかき分けて、マーチが子どもの傍に駆け寄った。
「どうしたの?」
 彼女は泣きじゃくる男の子の前にしゃがみ込むと、幼い弟妹にそうするように、掌で小さな頭を撫でながら目の高さを合わせて語りかけた。
「どこから来たのかな。お父さんやお母さんは?」
(なぜこんな所に子どもが、しかも一人で……それに、浴衣?……いえ)
 ビューティは少年の姿を凝視した。
 少年の着物の柄は、縦縞。色は暗くて分からないが、いまどきの浴衣ではあまり見かけないような柄である。生地はすり切れて薄汚れた、見るからに粗末な布。そして足元は、下駄でもサンダルでもなく、草履。しかも、藁で編まれている―――
「―――いけません! マーチ! その子から離れて!」
 ビューティが叫んだ。
「え?」
 マーチの注意が逸れた、その瞬間。
  ざざざぁっ!
 子どもの姿は黒い霧へと変化し、マーチの鼻の穴へと潜り込んだ。
「うわっ!」
 顔を押さえてうずくまるマーチ。
「「「マーチ!」」」「なお!」
 仲間達の呼ぶ声に応え、顔を上げた彼女は。
「……ふん。他愛もねぇ」
 眉間に刻まれた深い縦皺、敵意を剥き出しにした眼光、左右非対称に歪んだ唇、
「ガキの格好して涙の一つ二つもこぼして見せりゃ、コロっと騙されやがる。今も昔も、人間ってぇのはつくづくバカな生きもんだな」
 そして、乱暴な言葉遣い。どれもこれも、普段の彼女とは似ても似つかないものばかりだった。
「なお!」
 マーチの体を乗っ取った妖魔は、地を蹴って軽く蜻蛉を切ると、悲愴な声で叫ぶビューティの正面に降り立った。
「てめぇは気付いたみたいだが、少し遅かったようだな」
「っ―――」
 見知った筈の幼馴染みの、憎悪に歪んだ顔を眼前に突きつけられ、ビューティが動揺したその刹那。
「さっきの礼だ。受け取りやがれ!」
 拳を鳩尾に打ち込まれ、間髪入れず強烈な回し蹴りを食らう。華奢な体は立木の幹にしたたかに打ちつけられ、短い悲鳴とともに地面にくずおれた。
「へぇ。こいつぁ中々いい体だ、よく動くじゃねぇか。気に入ったぜ」
「ビューティ! ……おいこらなお! 目ェ覚まさんかいこのドアホ!」
 マーチは口元を歪めてにやりと笑い、突進してくるサニーの拳を紙一重でかわすと、その鳩尾に膝蹴りを叩き込む。くぐもった苦悶の声を残して、サニーも地面に伏した。
「今日の所はここまでにしといてやる。明日の晩を楽しみにしてな!」
 倒れたビューティとサニー、呆然と立ち尽くすハッピーとピースをその場に残し、妖魔に心身を乗っ取られたマーチは、山の奥の深い闇へと姿を消した。

*     *     *

 ―――目を覚ますと、天井板の木目模様が瞳に映った。
 身を起こそうとすると、体が鉛のように重く感じられる。
「……いか」「……ちゃん」
 名を呼ばれて周囲を見れば、心配そうにのぞき込む瞳が六つ。
「っ―――!」
 れいかははっと飛び起きて首を巡らすが、足りないあと一人の姿はどこにもなかった。
「……夢では、なかったのですね」
 誰に問うでもなく発せられた言葉に答える者はおらず、ただ重苦しい沈黙が場を支配する。
「もうすぐ、朝ご飯だけど……どうしよう」
 やがて、みゆきが口を開く。
「お婆ちゃんに、何て言ったら」
「……なおのことは、私が何とか誤魔化します」
 れいかはそう言って立ち上がると、手早く身支度を整えた。


「「「おはようございます」」」
「……あら?」
 味噌汁の入った両手鍋を運んできたみゆきの祖母は、茶の間に現れた四人の少女たちの顔を見渡し、首を傾げた。
「すみません。なおは少し気分が優れないと言って、まだ休んでいます。お祖母さまのごはんが美味しいからと、調子に乗って食べ過ぎたようで」
 れいかは、いかにもなお自身が言いそうなことを、ごく自然な表情と口調で老婦人に告げる。
「あらあら。それはお気の毒ねぇ」
 老婦人は特に訝しむ様子もなく、あとでお薬を用意しましょうね、と言いながら出来立ての味噌汁を椀に注いだ。


「ねえ、お祖母ちゃん」
 昨日までより少し―――随分静かな朝食を終え、食後の玄米茶をすすりながら、みゆきがふと口を開いた。
「この間燃えちゃったあの大きな木、どうして御神木って言われてたのかな。お婆ちゃん、何か知ってる?」
 重苦しく沈んだ気持ちに押し潰されかけていた少女たちは、一縷の望みを求めて一斉に老婦人の顔を見た。
「……例の噂が、気になるの?」
 少女たちの真剣さを少し不可解に思いつつも、老婦人はゆっくりと話し始めた。
「そうね、これは、お祖母ちゃんがこの家にお嫁に来て、お祖父ちゃんから聞いた話だけれど―――」

 ―――ある年の初夏のこと、来る日も来る日も降り続いた大雨で山が崩れ、大昔に封じられていた一匹の妖魔が解き放たれてしまった。巨大な蜘蛛のような姿をした妖魔は、人里にやってきては夜な夜な畑を荒らし、牛馬を喰らい、人を喰らった。怯える農民たちを救うため、領主は一人の侍を遣わした。侍は一際大きな体躯をした豪傑で、鎧兜に身を固め、一丈はあろうかという巨大な槍を自在に振るって、たちまちのうちに妖魔を追いつめた。ところが、ほんの僅かな隙に、妖魔は侍の体に乗り移ってしまう。乗っ取った侍の体を使い、妖魔は近隣の村を次々に襲い、殺戮の限りを尽くした。

「……大きな、蜘蛛……」
「……体を、乗っ取る」
 何もかもが、今そこにある事実と符合する。
 少女たちは、息を呑んだ。
「もう駄目だ、と、誰もが思った時に、ね」
 老婦人は、話を続ける。

 ―――その時、立ち上がったのは村の神社の巫女でもある、神主の娘であった。娘は神社に納められていた大弓と、たった一本の破魔矢を手に、妖魔の乗り移った侍に立ち向かった。大槍を振りかざして襲いかかる侍の胸をめがけ、娘はきりりと弓を絞り、狙いを定めて矢を放った。破魔矢は、硬い鎧の胸をいとも簡単に貫き、妖魔の体を一本の椎の木の幹に縫い止めた。驚いたことに、矢に貫かれた筈の侍の胸には、傷一つついていなかったという。
 以来、破魔矢の刺さった椎の木は、妖魔を封じた御神木として大事に祀られてきた―――

「で、ばあちゃん! その破魔矢、今どこにあんねん!」
 あかねは興奮を抑えきれず、ちゃぶ台に両手をついて身を乗り出しながらそう問うた。
「さあ、ねぇ。言い伝えが本当なら、御神木に刺さったままだったのでしょうけれど」
 あかねの剣幕に動じる風でもなく、のんびりとした口調で、老婦人。
「もし、そうだとしても。この間の雷で、御神木と一緒に燃えてしまったでしょうねぇ」


「あかん……なおを元に戻すヒントになるかと思たけど、全然ダメやん」
 縁側に腰をかけて、あかねは頭を掻きむしった。
「ごめんね。あまり役に立たなくて」
 と、みゆき。彼女が謝る筋合いなど何もないのだが、何となく、そう言わずにはいられなかったようだ。
「……いいえ。満更、そうでもありません」
 みゆきの祖母の話を聞いてから、ずっと難しい顔をして考え込んでいたれいかが、口を開いた。
「人を傷つけることなく、魔物だけを倒すことのできる破魔矢。それと同じものが、今、私たちの手元にもあります」
 静かな口調でそう言うれいかに、全員の視線が集まる。
「何や!? 勿体ぶらんと早よ教えや!」
 別にれいかは勿体ぶってなどいないのだが、考え、言葉を選びながらの彼女の語り口は、あかねには酷くもどかしく思えた。
「……プリキュアの持つ力は、基本的に魔を滅する浄化の力ですが、私たちの術にはそれ以外の属性があります。たとえば、あかねさんのサニーファイヤーは、邪悪なものを祓う浄化の炎ですが、火そのものは、それ以外の邪悪ではないものにもダメージを与えます。そしてそれは、やよいさんの電撃や私の氷も同じこと。ですが―――」
 れいかはそこまで言って、みゆきに視線を向けた。
「え。あたし?」
「そうか! みゆきのハッピーシャワーなら!」
「なおちゃんを傷つけずに、中にいる妖魔だけを倒せる!」
 皆の言葉に、ゆっくりと頷くれいか。
「みゆきさんが、今の私達の切り札です……ただ」
「ただ、何や」
 難しい顔で口ごもるれいかを、あかねが急かす。
「昨日の戦闘で、例の妖魔は、みゆきさんのハッピーシャワーとやよいさんのピースサンダーをまともに受けて、それでも倒れませんでした。つまり」
「……ハッピーシャワーだけでは、倒せない、ってこと……?」
 おずおずと、やよい。
「……わかった!」
 突然、みゆきが声を張りあげた。
「つまり……私が三倍がんばればいいんだよね!」
 コケるやよいとあかね、微苦笑するれいか。
「……だって。それしかないでしょ。……ね、れいかちゃん?」
 トーンダウンしたみゆきが、ぽつり、と言う。
 れいかは答えなかった。
 再び、重い沈黙が降りる。
「よっしゃ!」
 澱んだ空気を払うようにぱん、と左の掌を右の拳で打って、あかねは機敏な動作で立ち上がった。
「それだけ分かれば十分や! あとは昼寝や! みんな、寝るで!」
「あかねちゃん……なんで昼寝?」
 この流れだと、特訓とかじゃないの? と、やよい。
「マンガやあるまいし、今から特訓したってどうもなるかい。それより、今晩の戦いに備えてコンディション整えとかな。……この戦い、負けるわけには絶対いかへんのやからな!」
 いかにもアスリートらしいあかねの言に、三人も真剣な表情で頷いた。

*     *     *

 十六夜の月が、天頂に届く頃。

 藪の中で、がさがさと人の足が枯れ葉を踏む音がして。
「おう。待っとったで?」
 草を刈られて間もない野原の上にあぐらをかいて、サニーは待ちくたびれたわ、と、気怠そうに言った。
「……昨日の小娘か」
 灌木の茂みの中から、マーチが姿を現す。
「ここから先へは行かせへんで。意地でもここで止めたるわ」
 サニーはゆっくりと立ち上がると、腕を上に伸ばし、掌を天に向け、火球を一つ夜空に打ち上げた。
「ふん。人間ごときが、生意気に」
 マーチは端正な顔を禍々しく歪め、吐き捨てるように言う。
「貴様等が何人束になろうと、俺様の敵じゃねぇ。すっこんでろ」
「あんた」
 ふん、と鼻で笑うサニー。
「偉そうに、人間ごときて言うけどな。ちょぉ考えてみぃや? 何でウチがここであんたを待ち伏せてた思てんねん」
「……何だと?」
 眉間に深い皺を寄せて、マーチ。
「ウチらの大将が、ここで待っとればあんたが来るはずやて言うたんや。ウチらの大将、めっちゃ賢いで? あんたの行動、全部お見通しや」
 サニーは肩をすくめながら、嘲笑うように言う。
「あんたが何百年生きてんのかは知らんけど、所詮人間様にはかなわへんねや……ま、そんなんやから、何百年も封印されてんねんやろけど」
「なっ!」
 かっ、と、マーチの顔が怒りの色に染まる。
「だいたい何やねん、ウチらのこと小娘小娘て。その小娘に封印されて何百年も出て来れへんかった癖に、よぉ言うわ」
「黙って聞いてりゃいい気になりやがって、糞がっ―――っ!」
 不意に、いきり立つマーチの周囲に上空から無数の氷の矢が降り注ぐ。
 瞬く間に、氷の檻がマーチを閉じこめた。
「サニー」
 ひらり、と、水色の装束を翻してビューティが舞い降りる。
 続いて、ピースとハッピー。
「お待たせしました。怪我はありませんか?」
「ああ。こいつ、ホンマ単純やな。ビューティの言うた通り、ちょいとちょっかい出したらしっかり食いついて、時間稼ぎに付き合うてくれたわ」
 聞こえよがしに、サニーが言う。そうですか、と、無表情に答えるビューティの声をかき消すように、氷の檻をマーチの蹴りが打ち砕いた。
「……てめぇが大将か」
 双眸に爛々と憎悪をたぎらせ、足下に唾を吐き捨てるマーチ。
「ケッ。いけ好かねぇ女だぜ。……てめぇはすっこんでろ!」
 眉間を指で押さえながら怒鳴る。
「大将?」
 いったいどういうことですか、と、ビューティは困ったようにサニーを見た。
「言葉のアヤっちゅうやつや」
 悪びれもせず、しれっと答えるサニー。
「……そう思われた方が、好都合かもしれませんね」
 ビューティはちらりとハッピーの方を見て、独り言のように呟いた。
「そういうことなら早速―――」
 ぐ、と低く構えた姿勢から、マーチが地を蹴って飛び出す。
「大将の首を戴くとするか!」
 狙いは、ビューティ。
「だめぇっ!」
 ふたりの間に、ハッピーとピースが割って入った。
「れいかちゃんをなおちゃんと戦わせるなんて―――」
「―――そんなの絶対、だめっ!」
 助走の勢いの乗ったマーチの拳を、二人がかりで受け止める。
 マーチはひらりと体を返し、
「どきやがれこのクソどもがぁっ!」
 長い脚で鋭く横に薙ぐ。軽量なふたりの体は勢いよく弾き飛ばされた。
「うぉりゃあっっ!」
 炎を纏った拳を振りかぶり、サニーが突進する。
「―――あかね!」
 不意に、マーチが叫んだ。
 本来の、緑川なおの表情で、なおの声で。
「っ!?」
 動揺するサニーに、一瞬の隙が生まれた、その時。
「バカめ!」
 マーチが身を屈め、バネのように飛び出す勢いもろともに、突き刺すような拳の一撃がサニーの胸の中心を打つ。
「ぐふぁっ!」
 弾き飛ばされ、呼吸を奪われて地面をのたうち回るサニーをよそに、マーチは他の戦士たちの顔をぐるりと見渡した。
「……ダメだよ。仲間同士で傷つけあうなんて。もうやめよう……ね? みゆきちゃん、やよいちゃん」
 再び、いつもと変わらぬ優しい表情に戻ったマーチに、悲しげな声音で語りかけられ、ハッピーとピースは動きを止め、息を呑む。
「れいかも―――」
「―――プリキュア!」
 エメラルド色の瞳が向けられた瞬間、ビューティが叫んだ。
「ビューティ・ブリザーーード!」
 凄まじい冷気と浄化の魔力の奔流が、マーチを呑み込む。
「!? ……ぐぉわぁっっっ!」
 およそ少女とは思えぬ苦悶の声を上げ、マーチはその場にがくりと膝をついた。
「ビューティ!?」「れいかちゃん!」
 ピースとハッピーが、驚愕の色を浮かべ叫ぶ。
「っ……てめぇ、仲間を傷つけて平気なのか!」
「平気ではありません。ですが、その覚悟ができたから、私は今、この場に立っているのです」
 マーチに向かって一歩踏み出し、ビューティは静かに、しかしはっきりとした口調で言った。
「無論、私は、なおを助けてあなただけを滅ぼすつもりでいます。ですが、もしもそれが叶わない、その時は」
 そして、深い呼吸を一つ、して。
「どんな手を使っても、あなたを、止めます―――たとえ、この手を汚してでも」
「っ!」「れいかちゃん!?」
「れいかっ!? ちょ、自分が何言うとんか分かってんか!?」
「はい、勿論。……全ては、私が引き受ける覚悟でいます。ご心配には及びません」
 愕然とするピースとハッピー、ごほごほと時折咳込みながら怒鳴るサニーに、ビューティはそう言って、アルカイックに微笑んだ。
「そんなん言うてんとちゃうわアホぅ! さっきと話がちゃうやんか!」
「……ハッタリかましてんじゃねぇぞ、コラ」
 歯を剥いて睨みつけるマーチ。
「はったりかどうかは、いずれ分かることです。その身をもって」
 微塵も動じることなく、ビューティ。
「なおが畜生道に引き堕とされる様を、手をこまねいて見ているくらいなら。私は喜んで、修羅の道を征きましょう」
 その手の中に、氷の剣が出現する。
「……やよい!」
 まだ覚束ない足でやっと立ち上がった、サニーが叫ぶ。ぱちん、と指を鳴らす仕草とともに、両の拳が炎を纏った。
「れいかにそんな辛い目ェ見さしてたまるか! こいつはウチらでとっ捕まえるで! そしたらみゆきはハッピーシャワーや!」
「うん!」「わかった!」
 雄叫びを上げ、サニーが拳を振り上げ飛びかかる。
「うぉぉりゃぁぁっ!」
 ひらりと体を返し、マーチがそれをかわす。
 そして、カウンターのように飛んでくるマーチの拳を紙一重で避けて、渾身のボディブロー。
「ぐっ! ……うぉおぉぉ!」
 僅かに効いた感触はあったものの、踏みとどまったマーチの回し蹴りをまともに食らい、サニーの軽量な体は吹き飛んだ。
「なおちゃん……ごめんねっ!」
 後ろから、ピースがマーチの背中に飛びつき、
  ばりばりばりっっ!
 間髪入れず電撃を見舞う。
「ぐぉっ! ……くそっ!鬱陶しい!」
 マーチはピースの腕を掴み、力づくで引き剥がすと、そのまま強引に振り回して地面に叩きつけた。
「……やかましい! てめぇは大人しくおねんねしてな!」
 そして、狂ったように頭を激しく振る。
「! こうなったら―――」
「駄目です! みゆきさん!」
 パクトに気合いを込めようとするハッピーを、ビューティが制止する。
「まだです! もう少し……あと少し堪えてください!」
「でも!」
「それを外してしまったら!」
 悲愴な声音で叫ぶビューティに、ハッピーは抗議の声を呑み込んだ。
「……そうなったら……もう、後がありません。……お願いします、私が合図をするまでは」
 堪えてください、と。
 震える声で、言った。
「……わかった。私―――」
 ―――れいかちゃんを、信じてるね。
 そう答えるハッピーに、ビューティは小さく微笑んで見せると、マーチに向かって一歩踏み出した。
「くそっ……くそっ! くそっ!」
 執拗に飛びかかってくるサニーとピースを振り払いながら苛立ちを露わにするマーチは、氷の剣を手に向かってくるビューティの姿に目を留め、
「気に食わねぇ! たかが人間が偉そうに!」
 拳を振りかざし、彼女に向かって突進した。
「てめぇが一番! 気に食わねぇんだよっ!」
 ビューティは、自分の胸に右の掌を重ね。

 ―――変身を、解いた。

 長い黒髪が風になびき、シャーベットブルーのワンピースの、スカートの裾が翻る。
「なお!」
 青木れいかに戻った彼女は、両腕を広げ、真っ直ぐにマーチの瞳を見つめ、声を限りに、その名を叫んだ。
「れいかちゃん!」「な、ぁっ!?」「いやぁぁぁっっ!」
 仲間たちが悲鳴を上げ。

 次の瞬間。

 鈍い音がして。

 マーチの拳が、自らの顔面にめり込んだ。
「ぶ……ぅっ!」
 れいかは、仰け反るマーチの懐に飛び込むと、その胸に頬を押し当て、両腕を背に回した。
「ぐっ!」
 受け身も取れず、背中から地面に墜落するマーチ。
 ―――動きが、止まった。
「みゆきさん!」
 悲鳴のように、れいかが叫ぶ。
「! ―――プリキュア!」
 はっと我に返ったハッピーは、パクトに気合いを込めた。
「ハッピー……シャワぁぁぁぁぁっっっ!」
 眩しい桜色の、浄化の魔力光が、れいかもろともマーチを飲み込み。
「ぐぉあぁぁぁぁぁ!」
 苦悶の叫びを上げ、れいかの下で、マーチの体が激しく痙攣する。
「……なおちゃんを―――」
 ハッピーは気力の全てを掌に集めた。
 食いしばった歯が、ぎり、と音をたてる。
「―――返せぇぇぇぇぇぇぇぇっっ!」
「グギガアガァァァァァォォォォ」
 苦悶の声はやがて、人のそれとは似ても似つかぬ耳障りな音に変わり。
「ゲゲゲゲヶヶヶヶヶヶヶ……」
 マーチの四肢から、すぅ、と、力が抜けた。
「……っ」
 精魂尽き、ハッピーは肩で息をしながらその場にがくりと膝をついた。
 光の残滓が虚空に消え、辺りを一瞬、静寂が包む。
 全員が固唾を呑んで事の行方を見守る中、マーチの鼻の穴から、黒い霧のようなものが現れた。
「グギギ……」
 霧はやがて、昨日見た妖魔と同じ―――昨日よりさらに縮んで、子犬ほどの大きさになっている―――姿を成し、地面を這って逃げようとする。
「おっと」
 その行く手に、サニーが立ちはだかった。
「逃がさへんで?」
 そう言って、ぽきぽきと指を鳴らす。
 妖魔が慌てて後ろを向けば、
「絶っっ対! 許さないんだから!」
 そこには腰に手を当て仁王立ちのピース。
 妖魔は再び黒い霧に姿を変えると、今度は人間の子どもの姿をとった。
「……悪かった。許してくれよ」
 昨夜と同じ粗末な着物に藁の草履姿で、
「寂しかったんだ。三百年も、木の中にひとりぼっちで閉じこめられて。三百年もンな所に押し込まれてたら、誰だっておかしくなるだろ?」
 そう言って、妖魔ははらりと涙を流して見せる。
「……『人間は愚かだ。涙の一つ二つも流して見せれば、すぐに騙されてくれる』」
 大の字に倒れて気を失ったままのマーチを残し、れいかはゆっくりと立ち上がった。
「あなたが昨日、言ったことです」
 その周囲を、風が舞う。
 真夏では決してありえない、氷雪混じりの凍りつくような冷気が、彼女を取り巻くように渦を成し、
「……それを知りながら」
 アイスブルーの戦装束に身を包んだ、氷の女神が顕現した。
 夏の夜の蒸し暑さの中、全身から迸る冷気が、白い炎のように立ち上る。
「それでも騙されて差し上げるほど、私はお人好しではありません」
 彼女が歩を進める、その足の下で、冷気に当てられ凍り付いた青草がぱりぱりと乾いた音をたてて砕けた。
「っっ! 本当だ! もう二度と悪いことはしません! ごめんなさい! ごめんなさい!」
 幼児の姿のまま、必死に土下座をして見せる妖魔。
「―――それに」
 ビューティの手元で、再び冷気が渦を巻き、
「生憎私は、そんな偽りの姿やそら涙に心動かされるほど、情け深くもありません―――そう、なおのようには」
 氷の大弓が、姿を現した。
 右手には、氷の矢。
「なおの優しさにつけ込み、利用し、畜生道に引きずり込もうとした」
 弓を構え、光の弦に、氷の矢をつがえ、
「少なくとも私にとって、それはあなたを滅ぼすに十分な理由です」
 土下座をする幼子に狙いを定める。
「…………!」
 相手が全く動じないことを悟った妖魔は、再び黒い霧へと姿を変え、そのまま森の奥を目指して逃げ出した。
「……お爺様。私怨を持って弓を引く愚を、お許しください―――」
 光を纏った氷の矢は、ダイヤモンドダストの尾を引いて、一直線に宵闇を切り裂き、黒い霧を氷の礫に封じ込める。
 そして、

  ぱり…………ん

 氷の礫は砕け散り、封じた妖魔とともに、跡形もなく、虚空に消えた。

「……消えた……」
「……終わった……の?」
 散々苦しめられた割にはあまりにもあっさりとした結末に思えて、呆然と呟く、ハッピーとピース。
 ビューティは長い溜息をひとつついて、構えた弓を下ろした。
「―――れいかっ!」
 サニーの声がして。
  ぱしっっ!
 振り返ったビューティの左頬を、サニーの平手が打った。
「このダァホっ! ……なんでや! なんで一人で全部しょい込もうとすんねん!」
 突然のことに息を呑む二人をよそに、サニーは肩をいからせ、握りしめた拳を振るわせながら怒鳴り上げる。
「ウチら仲間ちゃうんか! 楽しいことばっかりやない、辛いんも苦しいんも全部分けあうんが仲間やろ! ……そら、なおがれいかにとって特別なんは分かる。けどな。もうちょっとくらい、頼りにしてくれたかてええんちゃうか!?」
 真っ直ぐなサニーの視線から目を逸らしたまま、呟くようにすみません、とだけ答えるビューティに、
「……ん゙あ゙ー! もう、けったくそ悪い!」
 サニーは苛立ちも露わに大声でそう言って踵を返し。
「ほれ、みゆき! 帰るで! あーもう、眠ぅてかなわんわ」
「うひゃわぁっ!? ちょ、あかねちゃん! 自分で歩けるからっ」
 地べたにへたり込んだままのハッピーを抱き上げ、どすどすと音が聞こえてきそうなガニ股歩きで帰路についた。
 その後ろ姿を見送って、
「……れいかちゃん」
 事の成り行きをじっと見ていたピースが、おずおずと口を開く。
「私達も、帰ろう? とりあえずなおちゃんを、ちゃんとお布団で寝かせてあげないと」
「……そうですね」
 ビューティはぼそりと答えて、気を失ったままのマーチの傍らに屈み込むと、彼女の胸に掌を当て、
  ぱりっ!
 自分の魔力を干渉させて、その変身を解いた。
「れいかちゃん」
 気を失ったままのなおを抱き上げる後ろ姿に向かって、ピースが語りかける。
「うまく、言えないんだけど。あの……れいかちゃんがどうして、その……あんなこと言ったのか、何となく、だけど……ちょっとだけ、わかるような気がするんだよね……ほんとに、何となく、だけど。だからね、その……」
 言葉を探しながらのたどたどしい語り口に、ビューティは背を向けたまま、けれど神妙に耳を傾けた。
「……あかねちゃんも、あんなこと言ってるけど、今は頭に血が上ってるだけだと思うし。だから、その―――」
 ―――ひとりで、どこかに行ったり、しないでね。
「! ……やよい、さん―――」
 ビューティが振り向くと、ピースは切なげに微笑んで、ほんの一瞬視線を交わし、
「……帰ろう? 私達も」
 そう言って、踵を返して駈けだした。
「……ありがとう、ございます」
 ビューティはひとりごとのように呟いて、いまだ正気を取り戻さないなおの顔を一瞥すると、先を行くピースの後を追った。

*     *     *

 ―――目を覚ますと、天井板の木目模様が瞳に映った。
「……なお」
 聞き慣れた柔らかな声が、優しく降り注ぐ。
「……れいか……あづっ!」
 答えて、身を起こそうとすると、体中に激痛が走った。
「なお!?」
「……大丈夫、ただの筋肉痛……あづづづ」
 怪我とかじゃないから、と断って、なおは暫く布団の中で悶絶する。
「あいつ、人の体だと思って無茶して……こんな筋肉痛、初めてだよ……ってて」
「……なおは小さい頃からずっと、運動してますものね」
 れいかはそう言ってなおの前髪を指先で軽く梳きながら、微笑した。
 なおはその感触に暫し、気持ちよさそうに目を細め、
「……ごめん」
 やがてぽつりと、そう言った。
「あたしのせいで、みんなにも随分迷惑かけちゃったし、それに」
 見下ろすれいかの瞳を、覗き込んで。
「れいかにも、随分酷いこと、したよね」
「それは。なおの意志ではないと、分かっていますから。私も、皆さんも」
 れいかはそう言って、小さくかぶりを振った。
「けれど。私は、なおに―――」
 続く言葉を遮るように、なおは布団の中から手を伸ばし、れいかの膝に触れる。
 そして、目が合うと、
「……ありがと」
 小さく微笑んで、そう言った。
「なお―――」
 暫しの、沈黙。
「……ずっと」
 なおが再び、口を開いた。その声にはまだ、気怠さが残る。
「みんなの声は、聞こえてたんだ」
「……そのようですね」
「気付いてたんだ」
 さすがだね、と、なおが小さく笑って、
「……だからって。あんなところで、変身解いちゃうなんて」
 いくら何でも無茶だよ、と。
 少し、咎めるように言うと、
「なおを、信じていましたから」
 れいかは悪びれもせず、そう言って。
「現に。ちゃんと、抱き止めてくれましたよね。私を」
「……ん」
 なおは、満足そうに微笑んだ。
「……今、何時?」
「六時、少し前です」
 ―――朝ご飯まで、もう一眠りできますよ。
 れいかがそう言うと、なおはうん、と小さく答えて、目を閉じ。
 あっという間に、眠りの底に落ちていった。


「れいかちゃん」
 なおの眠る部屋をそっと抜けだし、畳の上に膝をついて静かに襖を閉めたところで、声をかけられた。
「……みゆきさん」
「なおちゃんの具合、どう?」
 れいかの傍らに座りながら、みゆきが問う。
「今は、よく眠っています。怪我もないようですし」
 れいかが答えると、みゆきはよかった、と安堵の笑みを零して。
「……ね、れいかちゃん」
 そして、少し改まった様子で、切り出した。
 はい、と思わず身構えるれいか。
「ごめんね」
 みゆきは、単刀直入にそう言った。
「……なぜ。みゆきさんが、謝るのですか」
 少し困惑したように、れいかが問う。
「んー……一つは、ね。私、ちょっとだけ、れいかちゃんのこと疑っちゃったから」
 片手で自分の頭を撫でながら、少し跋が悪そうに、答えるみゆき。
「れいかちゃん、もしかしたら、なおちゃんを助けるの、諦めちゃったんじゃないか、って……本気で、なおちゃんごと妖怪を退治しちゃうつもりなんじゃないか、って。そんなはずない、って、わかってたのに、ほんの一瞬だけど、そう思っちゃって。だから」
 ごめんなさい、と。
 俯くみゆきに、れいかはいえ、と小さく首を横に振った。
「それから」
 みゆきは顔を上げ、れいかを真っ直ぐに見て、
「私が三倍がんばればいいんだ、なんて、そんないい加減な作戦で見切り発車しちゃったから。……そのせいで、れいかちゃんに、辛い決心、させちゃった」
 ゆっくりと、言葉を紡ぐ。
「なおちゃんの命がかかってるのに、そんな、うまくいくかどうかもわからない作戦で、いいわけないよね。そんなこと、ちょっと考えればわかるのに……ごめんね」
 れいかは目を伏せ、無言でかぶりを振った。
「……けど。れいかちゃんが、辛い役目を引き受けてまで、がんばってくれたから。今、私たち、ここにこうしていられるんだよね」
 みゆきはそう言って、膝で立ち上がると、俯くれいかを自分の胸に抱き寄せ。
「私たち、もう少しで、大事なひとを、ふたりいっぺんに、なくすところだった」
 ―――ありがとう。
 噛みしめるように、そう言った。
「っ―――」
 はらり、と、れいかの瞳から涙が零れ。
「ごめんね……ありがとう」
 降り注ぐみゆきの言葉に導かれるように、涙は止めどもなく溢れ出す。
 台所から聞こえる、朝餉の支度の音を遠く聞きながら、れいかはまるで憑きものが落ちたように、みゆきの腕の中で、声を殺して泣き続けた。


《fin.》

  


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