ちょっとだけランデヴー
「美奈子、マーズを待っていたのか?」
「セーラームーンたちが、マーズも来るんじゃないかって、騒いでいたじゃない?」
車に乗り込んだ美奈子は、アルテミスの問いに、ニヤッと微笑んだ。
「素直じゃないな、君も。サイン会の間、ずっとマーズの姿を探していたくせに」
「思い出してくれると思ったんだけど、まだみたいね」
「マーズの誕生日に新曲を発表したなんて、彼女は絶対に気が付かないだろうな。回りくどいよ、美奈子も」
「いいのよ。それより見た?マーズの困った顔。CD買うところ、写真に撮っておけばよかったな」
想いを込めて歌ったから、彼女は手に取ってくれたのだと信じたい。バックミラー越しに、小さくなったその人の姿を、愛しそうに見つめた美奈子は、いつか、全てを思い出したレイを想像して、クスッと笑った。
「誕生日おめでとう、レイちゃん」
美奈子の誕生日までに、全てを思い出してくれることを信じて。
それまで、この命が続くことを信じて。
今はまだ、この距離を楽しみたい。
「まだまだ、私には勝てないわね」
レイの戦いは、まだまだ続く・・・
ちょっとだけランデヴー−−−終
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